ふるさと納税とiDeCo・NISAを併用すると限度額が減る?わかりやすく説明します

iDeCo(イデコ)とは?

個人型確定拠出年金である通称iDeCoは公的年金にプラスして給付を受けられる私的年金制度の1つです。自分で設定した掛け金額を毎月積み立てて運用していきます。

掛け金と運用益を年金として受け取ることができますが、iDeCoには以下のような特徴があります。

  • 金融商品を自分で選んで運用する
  • 積み立ての支払い額が所得控除になる
  • 60歳以上から受け取り開始
  • 運用で得た定期預金利息や投資信託運用益が非課税になる
  • 受け取り時に課税される
  • 原則解約不可能

1. 金融商品を自分で選んで運用する
自分のリスク許容度や運用方針に応じて定期預金や投資信託などの金融商品を選択できます。

2. 積み立ての支払い額が所得控除になる
掛け金は全額が所得控除の対象となり税負担を軽減することができます。

3. 受け取り開始年齢
原則として60歳から受け取りを開始できます。60歳から受け取るには最初の掛金拠出から10年経過していることが条件です。10年に満たない場合は受取開始年齢が61歳から65歳となります。

4. 運用で得た定期預金利息や投資信託運用益が非課税になる
iDeCoで得た運用益は非課税で税金を気にせず運用を行うことができます。

5. 受け取り時に課税される
受け取り方法によって課税の仕組みが異なります。一時金として受け取る場合と年金として受け取る場合で税制が異なるため事前に確認しておくことが重要です。

6. 原則解約不可能
iDeCoは原則として解約ができませんが、特定の条件(例えば、障害状態になった場合など)を満たすと解約が可能になる場合があります。

iDeCoは会社員でも公務員でも主婦の方でも加入することができます。自分に合った運用方法や受け取り方を考えて将来の資産形成に役立てましょう。

NISA(ニーサ)とは?おすすめの書籍も紹介

NISAとは、2014年1月にスタートした少額からの投資を行う方のための非課税制度です。2024年からは年間投資上限額や非課税期間を大幅拡充した新NISAが開始されました。

新NISAについてはこちらの書籍がおすすめ!非常にわかりやすく参考になります。


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NISAには以下のような特徴があります。

  • 運用益が非課税
  • 資金の出し入れが自由
  • 元本の保証はなし
  • 長期投資に向いている

NISAは少額から始められる長期投資を前提として株式を運用していく投資。その運用益が限度額の範囲内で非課税になるという特徴があります。

iDeCo、NISAはふるさと納税と併用できる?

iDeCo や NISA とふるさと納税の関係は?同時に利用することができるの?という疑問を持たれる方も多いでしょう。

結論から言うと、iDeCo、NISA ふるさと納税と併用することが可能です。「iDeCo とふるさと納税」「NISAとふるさと納税」の組み合わせは勿論、「iDeCo、NISA、ふるさと納税」3つを併用しても構いません。

iDeCo の積み立ての支払いがそのまま所得控除になることは iDeCo にしかないメリットです。これはふるさと納税にも関連してきます。ふるさと納税の寄付上限は課税所得が多いほど高くなりますが、iDeCo を利用するとふるさと納税の寄付限度額も下がってしまいます

一方、NISA はふるさと納税には影響を与えないため安心して利用できます。iDeCo、NISA をふるさと納税と併用すると税金がどう変わるか、ふるさと納税の控除額がどうなるかを説明していきます。

いずれにしても、重要な事はふるさと納税の寄付限度額を超えないようにすることです。折角の節税効果が無駄にならないように事前シミュレーションはしっかり行いましょう。詳しくは後述の「iDeCo対応のシミュレータで限度額を計算しよう」をご覧下さい。

ふるさと納税の控除の仕組みについて

ふるさと納税の控除は以下の計算式で行います。

  • 所得税からの控除 = (ふるさと納税額-2,000円)×「所得税の税率」

控除の対象となるふるさと納税額は総所得金額等の40%が上限です。

  • 住民税からの控除(基本分) = (ふるさと納税額-2,000円)×10%

控除の対象となるふるさと納税額は総所得金額等の30%が上限です。

  • 住民税からの控除(特例分) = (ふるさと納税額-2,000円)×(100%-10%(基本分)-所得税の税率)

特例分が住民税所得割額の20%を超えない場合に限ります。20%を超えてしまった場合は、以下の式で住民税からの控除(特例分)を計算します。

  • 住民税からの控除(特例分) =(住民税所得割額)×20%

この場合(ふるさと納税額-2,000円)の全額が控除されず、実質負担額は2,000円を超えます。

各計算式は限度額が与えられていますが、限度額は所得金額に影響されます。所得金額が小さくなれば同様に限度額も小さくなります。

iDeCoとふるさと納税を同時に利用すると損?

iDeCoとふるさと納税をうまく併用するには

iDeCoの積立がふるさと納税に与える影響や両制度を上手に活用する方法について解説します。

少し難しい内容ですので、面倒な解説を読むよりも結果が知りたいと思われる方はシミュレーションをしてしまうのが早いでしょう。楽天の詳細シミュレータではiDeCoに対応した限度額のシミュレーションができます。

iDeCoの積み立て額は “小規模企業共済等掛金控除” 欄に入力します。シミュレーション方法は楽天ふるさと納税FAQ iDeCoの項目も参考になります。

iDeCoは上述のとおり、積み立ての支払い額がそのまま所得控除となり課税所得を減少させます。課税所得を減少させることで所得税や住民税を節税することができます。その結果、ふるさと納税の控除限度額、還付額も減少してしまいます

しかし、iDeCo には強力な節税効果があり、ふるさと納税の限度額の減少以上の節税に繋がります。「ふるさと納税で寄付できる金額が減る」という理由で iDeCo とふるさと納税を併用しないのは損と言えるでしょう。

両制度のメリットを最大化するためにも控除の仕組みを理解しておきましょう。

iDeCoを併用するとふるさと納税の限度額はどう変わる?

iDeCo は積み立ての支払いがそのまま所得控除になります。所得金額が低くなり、結果としてふるさと納税の限度額も低くなるわけです。

年収400万円の会社員(35歳:独身)のふるさと納税の控除上限額は iDeCo の有無で以下のように変化します。

  • iDeCo を併用していない → 42,000円
  • iDeCo の掛金 20,000円 → 36,000円

iDeCo の併用でふるさと納税の控除上限額が6,000円減っています。これは一見すると寄付できる金額が減って勿体ないように感じてしまいますが、実はそうではありません。

実際には、iDeCo の掛金が全額所得控除になるので、ふるさと納税の控除額の減少以上の節税に繋がります。上記の例でどの程度の節税になるかというと、

所得税の節税額
240,000円(20,000×12ヶ月)× 所得税率5% = 12,000円

住民税の節税額
240,000円(20,000×12ヶ月)× 住民税率10% = 24,000円

合計36,000円

ふるさと納税の控除上限額は多少減ってしまいますが、それ以上の節税効果があることがわかります。iDeCo とふるさと納税の併用をおすすめする理由はここにあります。

iDeCoを併用した時の控除限度額の目安

iDeCoを併用した時にふるさと納税の控除限度額は様々な条件によって変わります。家族構成、世帯収入ごとに iDeCo 併用時の控除限度額の目安を表にしました。

横軸が iDeCo の掛金(月)、縦軸がふるさと納税をする本人の年収です。

独身、または共働き(扶養なし)の世帯

独身 or 共働き夫婦(扶養なし)の場合
年収(本人) 年収(配偶者) iDeCoなし 月10,000円 月20,000円 月30,000円 月50,000円
300万円 300万円 28,000円 25,000円 22,000円 19,000円 14,000円
400万円 300万円 42,000円 39,000円 36,000円 33,000円 28,000円
500万円 300万円 61,000円 58,000円 55,000円 52,000円 43,000円

共働き夫婦 + 高校生1人の世帯

共働き夫婦 + 高校生1人の場合
年収(本人) 年収(配偶者) iDeCoなし 月10,000円 月20,000円 月30,000円 月50,000円
300万円 100万円 11,000円 8,000円 5,000円 3,000円 2,000円
400万円 100万円 25,000円 22,000円 19,000円 16,000円 11,000円
500万円 100万円 40,000円 37,000円 35,000円 32,000円 26,000円

共働き夫婦 + 高校生2人の世帯

共働き夫婦 + 高校生2人の場合
年収(本人) 年収(配偶者) iDeCoなし 月10,000円 月20,000円 月30,000円 月50,000円
300万円 100万円 100万円 3,000円 2,000円 2,000円 2,000円
400万円 100万円 17,000円 14,000円 11,000円 8,000円 3,000円
500万円 100万円 32,000円 29,000円 26,000円 23,000円 18,000円

iDeCo対応のシミュレータで限度額を計算しよう

ふるさと納税の控除限度額の計算には「ふるなびの本格シミュレーター」「楽天の詳細版シミュレーター」をご利用下さい。iDeCoの積み立て額は “小規模企業共済等掛金控除” 欄に入力します。

シミュレーションは必ずしも正確な控除額になるわけではありません。複数のサイトでシミュレーションを行い大体の目安を測ることが重要です。”小規模企業共済等掛金控除” の入力欄があるシミュレータを使いましょう。

シミュレーションについては以下の記事の「詳細シミュレーションで正確な数値を算出しよう」で解説していますのでご覧ください。

控除額がシミュレーションと違う!上限額を超えてしまう原因とは?

少し難しく感じるかもしれませんが、iDeCoの掛金額は医療費控除や配偶者控除と同様に所得金額を小さくします。所得金額が小さくなれば控除限度額も小さくなるということです。

繰り返しになりますが、iDeCoの掛金額が所得金額から控除されることで所得税や住民税が節税されます。ふるさと納税の控除限度額を気にしすぎることはありません。

NISAとふるさと納税の併用、寄付限度額はどうなる?

iDeCoと異なり、NISAの積立額は控除になりません。非課税であるため所得金額に影響もありません。したがって、ふるさと納税に影響はなくふるさと納税とNISAを併用することはもちろん可能です。

楽天ふるさと納税FAQ NISAの項目には以下のように書かれています。

譲渡益がある場合は「譲渡所得」の「株式」に、配当所得がある場合は「配当所得」に該当の金額をご入力ください。

基本的に寄付限度額シミュレーションでNISAでの所得は入力する必要がないはずですが、「楽天の詳細版シミュレーター」でシミュレーションをする際には注意しましょう。

サラリーマン等の給与所得者でふるさと納税のワンストップ特例制度を利用している方は、NISA を利用しても引き続きワンストップ特例制度を利用できます。

なぜなら、NISA口座内で取引をした場合、利益を出しても基本的に非課税となるため確定申告を行う必要がないからです。

ふるさと納税・iDeCo・NISAの関係をまとめると

  • iDeCo、NISAはふるさと納税と併用できる
  • iDeCoで課税所得が減ると、ふるさと納税の上限額が減る
  • NISAはふるさと納税に影響しない
  • iDeCo対応のシミュレータで上限額を計算することが重要

ふるさと納税、iDeCo、NISAはどなたでも利用しやすい制度です。しかし、税金については非常に複雑で難しいです。

私たちにとって重要な事は、これらの制度のメリットを最大限享受することでしょう。そのためには、ふるさと納税をする前に寄付限度額の計算をしっかりと行っておく事が重要になります。